プレスリリース

先進的なテーラード・テンパリング技術を誇る独ダイムラーのAutoForm活用事例

燃料消費量とCO2排出量の低減に取り組む自動車メーカー各社にとって、車体の軽量化が重要なテーマとなっています。特にホワイトボディに関しては、適切な材料を用いて理にかなった工程で製造すれば、大幅な軽量化が見込めます。その実現のための鍵となるのが、高張力鋼板(ハイテン材)や超高張力鋼板(超ハイテン材)のテーラード・テンパリングです。独ダイムラー(Daimler AG)は、AutoForm Engineering(以下、AutoForm)のシミュレーション・ソフトウェアを活用して、同工程における数多くの複雑な課題を解決しました。

成形金型の形状を検討したり、テーラード・テンパリング工程計画の詳細を決定したりする作業には困難が伴い、材料挙動、熱流量、相変態動力学に関する包括的な知識が必要です。また、テーラード・テンパリング工程を解析・制御するには材料の構造変化を深く理解しなければなりません。こうした複雑な工程計画こそ、コンピュータによるシミュレーションが得意とする領域です。シミュレーション・ソフトウェアに求められるのは、熱間プレス工程やクエンチング工程をより現実的に表現することに加え、最終的な部品特性を信頼できる精度で予測し、その結果として、この特殊なタイプの熱間プレスに即した金型製作ノウハウを提供することです。AutoFormはこの困難な課題の解決を目指し、熱機械連成モデルを含むソフトウェア、AutoForm-ThermoSolverの開発に成功しました。

AutoForm-ThermoSolverを使えば、プレス部品のどの部分においても温度履歴を確認することができ、熱間プレス成形中の材料挙動、特にクエンチングに関する材料挙動を詳細に見ることができます。十分な予測精度を得るためには、関連するすべての現象とその相互関係をモデル化する必要があります。熱に関しては、ブランク、金型、そして周囲環境の間の熱流量が関係し、放射やシート内の熱伝導も考慮しなければなりません。機械面については、プレス成形による塑性変形はもちろん、冶金学の観点から冷却による相変態も考慮する必要があります。

実験と検証の結果、AutoFormは熱機械治金モデルを実証し、その他の決定的なパラメータも特定しました。ダイムラーの協力で試験用金型を作成し、エアランゲン・ニュルンベルク大学の生産技術研究所で分析的な試験を実施。AutoFormはAutoForm-ThermoSolverのパイロット版を提供しました。この共同研究により、工程を決定するパラメータと最終的な材料特性の依存関係などを含む、基礎的な専門知識の開発が進みました。

ダイムラーはこの実験結果を最新の実部品生産に適用し、シミュレーションの品質を確認するためにBピラーの金型を作成。そして小ロットのBピラーをジンデルフィンゲン工場で生産し、機械特性を精密かつ広範囲に検証しました。部品のさまざまな箇所からサンプルを取得して引張試験を行い、その結果について両社の専門家が徹底的に議論を重ねました。結果の精度を決定づける物理的要因は、すべてシミュレーション・モデルに取り込まれました。また二次的な要因を除外したことにより、計算速度の面で良い結果を得ることができました。両社は試験期間を通じて、冷却工程中には潜熱を考慮する必要があるという結論に達しました。それによって極めて高い精度で最終部品特性を計算できるようになりました。AutoForm-ThermoSolverでは、引張強度、引張延伸、板厚、応力分布のほか、硬さやマルテンサイト含有量等の結果がグラフィカルに表示されます。テーラード・テンパリング工程の計算時間は、従来の成形と比較して平均5%ほど増加します。この比較的軽度の負担は、工程をより深く理解できるという利点によってご納得いただけることでしょう。

ダイムラーとAutoFormは、当初設定した共同研究の目標を達成しました。1年間の試験期間を経て、ダイムラーは2012年からAutoForm-ThermoSolverを効果的に利用しています。同社はシミュレーションの品質確保に力を入れています。複雑な工程戦略についても、AutoForm-ThermoSolverによる計算が可能で、部品生産中の材料挙動に対する熱機械の影響をより良く検討できるようになったといいます。また、治金の計算モデルに関する情報が追加されたことによってシミュレーションの妥当性と情報量が増しています。

最後になりましたが、もう一つ重要な成果があります。テーラード・テンパリング工程を徹底的に研究したことで、従来の加工硬化についても理解を深めることができたのです。その結果、熱変形の計算に関してさらなる開発が必要であることが分かり、過去数カ月にわたって集中的に研究を行いました。この共同研究の次のステップは、最新の開発結果の実用性を検証すること、そして将来、AutoForm-ThermoSolverの新しいバージョンとしてリリースすることです。

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